7日で1週間

2025.05.11-05.17


05.11(日)

夜はすき焼き。

昨年から「ちくわぶ」という粘土のような奇っ怪な食べ物を、すき焼きに入れるという妻由来の奇行が家庭内流行中なのだが、はじめは「嫌ぁ嫌ぁ」と拒否していた私も、少しずつ舌が、身体が慣れてきている。慣れてきてしまっている。というより、なんなら無いと少し、物足りなくなっている。

ところが。

いつもの成城石井、いつもの販売棚にちくわぶが無い。
代わりに、ちくわぶのあったスペースは焼きちくわに乗っ取られており、周囲の棚もかまぼこ系の輩ばかり。ちくわぶは、そこにはいない。

「せっかく好きになりかけてたのに」

練り物抗争の非情なる結末を目の当たりにし、絶句しているそばで、妻に「コレ以上ノ捜索ヲ打チ切ル」旨の報告する娘。

が、落ち込むのも束の間。幸運なことに、別のスーパーマーケットで発見した我々は、いつもよりも長めのブツをゲトし帰宅。

本日は母の日ということで、野菜を切る、しらたきを水道水で洗う、など、すき焼きの準備は、娘とともに行う。

手に入れた栄光のちくわぶの90%近くをひとりで食した娘が、おそらくは、オーバードーズ気味なのだろう。先ほどからソファにダウンしている。

05.12(月)

別に、とびきり不幸なことが起こったりしていないので、「厄日」と称するのは今日の日に失礼というか、可愛そうなんだけど、アクションのひとつひとつに対して、微妙にボタンがかけ違ってしまう、決定的な傷は負わないし「結果としてはオーケー」なんだが、ストレートに、想定通りにうまくいかない。そういうことが打ち続くような日がたまにあって、今日はまさにそういう日だった。

夜は、Nを貸し切りで歳の離れた友人の還暦祝会食。家族と友人らで。
宴が盛り上がり、気がつくと21時半。

気持ちよく酔っている妻を残し、慌てて娘を連れて中座。帰って速攻寝るぞ!と息巻いて乗ったタクシー、運転手が行き先を聞き間違えて、あわや全く逆方面へ向かうところであった。

ギリギリのところで、回避。

そういう日だった。

05.13(火)

兼ねてから存在は知っていたのだが、店主の体調不良により、ほとんど開店休業中であったレコード屋に、知人のカーで連れて行ってもらう。

半ば魔窟のように古レコードが散在している店内で、気難しそうな偏屈爺がムスッと座っているのかと思っていたが、まったく浅はかな思い込みであった。
店内は整理整頓が行き届いており、レコードはきちっとインデックスされ探しやすくなっているし、店主はとても穏やかな好々爺。87枚買っても18,000円で、大満足。また私の店に魔力が充填された。

古びた歌謡曲のレコードを漁ったり囲まれたりして思うのは、音楽、絵画、小説など表現活動一般だけでなく、あらゆる商売において、一生のうちに一本でもヒット作を出せるのがそもそも喜ばしいし、珍しいことで、松崎しげる「愛のメモリー」のように、その作品一本でも豊かに暮らし、世界に感激を残すことができるのだから、心の中の有象無象の魔物たちは何らかの形にして世に出していったほうがよい。

05.14(水)

14時に小学校を終えて帰ってくる、6歳女。

連日中毒になるほどドラえもんを鑑賞しているせいで、{のび太になりたくない圧力}が彼女の中で強いのか、帰宅後すぐに学校の宿題にとりかかる平日の午後。ところが、今日は突然、帰宅するや否やランドセルを放り出し、台所で何やらガチャガチャやっている。

父たる私はギターで、ナンシー・シナトラの「Bang Bang」を練習しながら、リビングのソファでそれを眺めていた。

5分くらい水道を垂れ流しにしながらガチャガチャやっているので、さすがに様子を見に行くと、シンクに出し放しにしていた朝食時の食器たち、そいつらをスポンジで洗っている。我々夫婦の怠惰を、子が自律的に補完している。ヤングケアラー?

さすがにギターを置き、彼女とふたりで並びながら、洗いたての食器を一緒に拭き、棚に片付けて、彼女はいつも通り宿題へ。私は再び「Bang Bang」へ。

Bang bang, I shot you down
Bang bang, you hit the ground
Bang bang, that awful sound
Bang bang, I used to shoot you down

あと3年くらいは、こういう午後を過ごしたい

05.15(木)

昼食は蕎麦。

自転車で行ける範囲の蕎麦屋は大体制覇しているのだが、その中でもここ最近気に入っているOにて、カツ丼ともりそばのAIGAKE。濃い白味噌の味噌汁もつくのか、うれし。昔ながらの古びた店内に11時オープンとほぼ同時に入店し、オーダー。提供。すぐに大工や近隣のサラリーマンで混み合う店内。店内の角にテレビが吊るされており、キューピー3分クッキングの時間。今日の先生はオイルサーディンを激推し。

「何にでも使えますからね、まとめ買いしておいてもいいです」

夕方。昨夜ハイになって大量に注文した書籍が続々と届く。

05.16(金)

娘が帰宅後、昨日カルディで購入していたホットケーキミックスで自宅おやつを共作。オリゴ糖とバターを塗ったくって食べる。米粉。

夜は無駄営業。

前半ゆっくり気味で、先日手に入れたレコードを視聴も兼ねてかけまくっていたが、後半からパラパラと来店があり、結果盛況。ハワイから旅行に来ていたTEDという異国のドラマーとセッション。ジョニー.B.グッドや、ハウンドドックなどを演る。

「ハウンドドックはElvisのオリジナルじゃないよな?」

「ああ、黒人のブルース女だ、たしか」

「Elvisは黒人から曲を盗んで発表してたからな」

「そうそう、10ドルで買ってたっていうよね」

タランティーノっぽい台詞の応酬。

ダムドのレコード「地獄に堕ちた野郎ども」が届いていて、ひさしぶりに聞く。チープで、軽薄で、それでいて、とてもクール。

05.17(土)

東京にて。

ロマンスカーで家族と新宿へ。そこから彼女らは祖父母の家へ一泊。
私はかねてより行きたかったカセットテープ屋に。

これといった最寄り駅が無い東京の一角は「陸の孤島」のように感じる。
迷子になりながらフラフラと知らない町を歩くのが好きなので、歩いて行きたかったが、あいにくの強雨と強風でタクシーにて向かう。

アタイ「バカでかい屋敷ですね」

タクシー「あ、隣にこれまたバカでかい宗教団体の施設があるので、教祖の家じゃないかと思っているんですよね」

その、バカでかい宗教団体の施設裏のアパルトメントにテープ屋はあり、ジャニス・ジョップリン、ドアーズ、ココ・テイラー、ZZ TOP、エディ・コクランなどを購入。

「環七」という無機質な城壁に囲まれたエリアに移動。こちらも絶妙に陸の孤島。東京は網の目のように地下鉄や電車が張り巡らされているように思えるが、こういう飛び地のような地区が点在しており、そのどれもがどこか虚ろ。時代がせき止められているような小道にびっしりとアパートや建物が鎮座している。

炭火で焼いた牛の肉をホッピーで流し込み、帰宅。

夜、海岸にて友人らと焚き火。

雨雲が消え去り、月のランウェイができている。
パチパチと音を立てゆらゆら燃える火を見ながら、私はジミ・ヘンドリックスになった。

BRAKE ON THROUGH TO THE OTHERSIDE.

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ポルカ オブ ザ バタフライ

2025.07.27-08.02 07.27(日) 自宅に朝から大工さんがやってきて、ベランダに縁側を作る作業。 その間ずっとソファにゴロゴロと座り、iPadで最近お気に入りの子供向けドラマ、昔で言うポワトリン的な、勧善懲悪、女子グループが主人公のやつ、を延々と観ている娘。なぜかこのドラマは女子同士の秘密であり、ママとふたりでこそこそ言いながら観ている。わたしが近づくと「きゃあああ、みないでええ」と楽しげに騒ぎ立てるので、おれはこの家では完全に男子である。まあどこでも大体、男子なんだけど。 夕方、大方の作業を終えて、大工さんが帰る。激烈に暑い中、そして激しい腰痛を発症している中、ありがとうございました。 晩飯は貰い物の干物。旨い。 07.21(月) 七五三のお写真撮影当日。 娘は自分で選んだ和服とドレスの2パターンの衣装を着付けてもらい、まるでモデルのような出で立ち・振る舞いで、カメラマンによる数々のポージング指示に答えながら、キャッキャッと写真を撮られていた。4年前のときは、着付けや髪結、メイキャップなどの間も、退屈を凌げるようにアンパンマンのDVDなどを観させられ

コピーキャットブルース

2025.07.20-07.26 07.20(日) 前日の疲れもあり、何もしたくない日。 昼、猛暑のなかで蕎麦を食い、家族で駅ナカで食材を買う。 本屋をひやかし、何冊か購入。娘がだいぶ文字をすらすら読めるようになってきているので、ひとりで読めるような本を選んで買う。なんか女子女子しいやつを選んでいた。 国政選挙の結果が気になりつつも、21時に寝落ち。 07.21(月) 今日は、午後からプールへ行く日。 一昨日の縁日イベントで、久しぶりの再会を果たした保育園時代の同窓生たちと約束した、プールへ行く日なのだが。 「プール、行きたくない」 が、朝からはじまり、夫婦揃ってげんなり。 結局、妻がなだめすかし、連れて行ったというので、わたしも動向が気になり、昼食後にプールに寄ってみる。 友人らがキャッキャッとプールの中で遊んでいる岸辺(プール・サイド)に、洋服のまま立ちすくみ、泣いている人を発見。傍らに困り果てたワイフの姿。 とにかく「プールに入りたくない」の一点張りで、一切の譲歩・妥協を許さない。じゃあ帰るのか?

雨霧の向こう側

2025.07.13-07.19 07.13(日) 気が狂うような猛暑が落ち着き、三日目。どうやら南の果てでは台風が発生しているようだが、とにかく、おもてが歩きやすい。 布団しきっぱなしでダラダラと映画を見て日中を過ごし、夜。 妻が会食ということで、娘と二人で彼女が愛するB・キングへ。 「次は番号札何番が呼ばれるでしょうか」ゲームをしながら、ジュニアサイズのバーガーを2つと、娘の残したチーズバーガーの欠片をジンジャーエールLサイズで流し込む。たまに食うと美味い。「身体に良い」とされていることだけを続ける生活というのも、人生の色気に欠ける。健康は大事だが、“暮らし”を疎外してまで追い求める健康というのは、もはやカルトである。「毒も喰らう、栄養も喰らう、両方美味いと感じて血肉に変えるのだ」と、その昔、地上最強の生物も言っていた。 だから、わたしは、娘がフライドポテトをカルピスにヒタヒタに浸して食べる癖を咎めない。 07.14(月) 午後。 下校後の娘。あきらかに虫の居所が悪そうな日。 宿題が終わったから見て、というので見てやり、算数の計算間違いを1問だけ指摘すると、

メスカリ漬けの猫

2025.07.06-07.12 07.06(日) LIFE史上、初の弾き語りでの、LIVE。 H町にある喫茶Mにてイカしたイベントのオープニングアクトとして30分のステージを任せてもらったので、実演。 会場の雰囲気や録画いただいた動画などを見るに、前座としての火付け・焚付けなど、やるべき仕事はきちんとやれたように思う。まあそれ以上に、個人として非常に楽しかったし、自信もついた。 語るべきことはたくさんあるのだが、やはり「一曲目から泣いてしまいました」という初見のお客様がいたことが、ハイライト。むしろこちらが泣いてしまいそうだった。空白期間はありつつ、わりと長いこと詩を作ったり歌ったりしてきた中で、「今夜はフロアを沸かせたぜ、あちき」という経験はあるけれど、泣いてもらったのは初めてだったから。涙がこぼれそうであった。 その後、この喫茶の土地主である御年94歳のレディとレゲエミュージックで手を取りながら踊り、 「あんた、わたしと踊ったからね、長生きするわよ」 と、耳元で囁かれる。 人というよりも、神木とか大きな樹木に近い匂いを感じた。 キープ・オン、ロックンロール。